第35回目の集まりが7月30日にZoomで
7月31日に対面(新宿コズミックスポーツセンター)で行われました。 今回は夏をテーマにした選書ということで、 ロバート・A・ハインライン 『夏への扉』(原題:The Door into Summer) 1957(1958日本語訳) を読みました。 オンラインでは海外から時差を超えてご参加くださった方もいて、Star Trekを例に、アメリカのSFはリベラルな社会を目指そうというメッセージであるのか…という点についても話が盛り上がりました。オンラインであげられたトピックとしてはこちらです↓ ・主人公についてどう思うか?(好き、嫌い、わかる、わからない、等) ・現代のSF(時間旅行で未来に行く系)の未来はどんな感じなのか? ・「外に通ずるドアが11」ってどんな家なの…? ・コールドスリープしたい?したくない?何年くらい? ・ジョン&ジェニィ、アゲ♡ ・過去を変えてしまうことの是非 ・個人主義とSFについて? ・あなたはどちらを選ぶ?猫ちゃんor万能ロボット ・タイトルの「夏の扉」の夏とは何を指してるんでしょうか? 大戦後のアメリカで大量生産大量消費が圧巻し始めた時代の背景も感じさせつつ、日本やアジアの描かれ方が若干気になる点もありましたが、全般的に参加者の評価は高かったです。未来予想も大変興味深く読みました。ハインラインの作品の中でも、こちらが特に日本で人気が高いとか。それにしても万能家事ロボット、欲しいですね。 普段は選書者が誰であったのか…というのは語られないことが多いのですが、今回はなんと特別に、こちらの本を紹介してくださった方からご寄稿頂きました。 しかも、一首詠んでいただきました♫ _________________ 今回で35回目になる新宿読書会。私が参加したのはオフラインの方ですが、前回に引き続き今回も初参加の方が多数だったので、数年前から参加している私も毎回フレッシュな気持ちで会に臨めます。そして今回も、会の中では何度もハッとさせてもらえる発言がたくさんありました。読書量の多寡にかかわらず、そういう発言はどなたからでもあります。読書を通じていろんな人の人生や考え方に触れるのがとても面白いと再確認した次第です。 今回の対象は、夏にふさわしい本ということで、『夏への扉』を推薦しました。投票で選んでいただいて実際に読んでみれば、舞台は冬でした。読書会ではどう言われることかと思いましたが、蓋を開けてみればそれもまた面白い議題として取り上げていただけて良かったです。 今回、特に参加者の関心を惹いたのは、ベルとリッキーという二人の女性でした。醜悪でありながらもパワフルなベルに対して、素直で優しいけれど主体性を感じられないリッキーは、この小説の中で、おそらくは著者が意図しない形で一つの対比を成しているようにも思います。 まず、会の中で、なぜベルはあのような性格になってしまったのか、その来歴についてまでみんなで話し合うことによって、ベルという女性の輪郭がさらに際立ちました。むしろベルを主人公にしつつダンとかが裏で何かやっているという映画を見たい、という意見も出ました。それくらい陰影に富んだキャラクターが、未来に行った最初の場面で脱落したのが惜しまれます。といっても、それが必然かそれともそうではなかったのかも、検討の対象になったのですが。 これに対してリッキーは13歳(でしたっけ?)にダンおじさんと別れて、21歳まで成長して、そのあとは冷凍睡眠でおじさんが迎えに来るまで寝ていることを選択する、というキャラクターです。主体性がしっかりと描かれているとはいえません。子供が「小さな大人」とみなされていた時代の名残ではないかという指摘もあり、少し古臭さを感じさせます。 しかし、会の中では、上記のような指摘を踏まえつつ、リッキーがそのような選択に至る過程を掘り起こす意見がたくさん提出されました。どこか抜けているけれど純粋なダンおじさんと愛猫ピートの幸せで優しい記憶、それが13歳から21歳にかけて憧れとともに神格化してしまったのではないか。いや神格化とまでいう必要はない、子供っぽい同年代よりもダンおじさんへの憧れを残しつつづけるのは自然だ。あるいは、ダンおじさんは超絶金持ちなので、怜悧でダンおじさんを選択してもおかしくない。いやリッキーは最初はお金をもらうのを拒否したし、その後株をもらったので十分お金持ちのはずだ、などなど。 こういう風に自分で思ってもいなかった解釈の可能性が拓かれること、それに適した場をみんなで支えていこうという姿勢が共有されていることが新宿読書会の醍醐味だなあ、と改めて感じました。 私としては、本小説の最大の魅力は、「夏への扉」に代表されるように、タイムトラベルSFと猫への愛という二つのテーマを美しく融合させているところにあると思います。天下のウィキペディアにも「「猫SF(あるいは猫小説)」の代表作としても知られる。」と書いてありますしね(私が追記したのではありません)。 そこで一首。 猫が行く 秋に食卓 春は窓 冬ならベッドか夏への扉 __________________ 暑さが厳しい今こそ、ステイホーム&読書のチャンスかもしれませんね( ^ω^ )
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活動記録このページでは、新宿読書会のさまざまな活動を記録していきます。メンバーの方に適宜依頼もしつつ、主にKuniが執筆を担当。 Archives
December 2022
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